浜松ホトニクスC12880MAを使って分光測色計(カラーメーター)を作ろう

こちらは分光測色計に関するメインページです。他、いかのような補足記事を随時更新していきますので、よろしければ御覧ください。



分光測色計(カラーメータ)製作途中
実は完成してます!!

まずは動画を御覧ください

早速ですが、分光測色計(カラーメーター)を作成しましたので、分光測色計とはなんぞやという人もまずは動画を御覧ください。

背景

話変わりますけど、最近トゥイッターを始めたんですよ。今の若い人たちは知らないと思いますが、昔google+っていうSNSを使っていたんですけど、それが閉鎖してしまい、泣く泣くトゥイッターを始めたわけです。おじさんあまりこういうの詳しくないので、巻き込み?とかいろいろしたりしてますがなんとかやってます。振り返れば私の人生、失敗ばかりです。
で、google+でもトゥイッターでも、プロフィールのカバー写真は同じのを使っているのにお気づきになりましたか?

そう、お人形さんです。かわいいですよねー。今年こそ自分もお人形とかお迎えして、とびっきりかわいい写真撮るぞーなんて意気込んでいたら、先にgoogle+が閉鎖してましたよ。


私は風景写真とかは好きなんですけど、室内で照明とか考えて撮影することがあまり経験がなく、苦手意識がありました。そこで、お人形の可愛さを極限まで表現できるようにと色彩工学を勉強しようと思いました。
こういう構図で撮るとか、三要素(シャッタースピード、絞り、感度)をおさえるとか、このカメラはこういうシーンが得意だとかノウハウやカメラの機能、性能についてはよく聞きますが、光を受けるものたちすべての源となる光源についてあまり議論がされておりません(個人の見解です)。
特に今日では、LED照明などの奇天烈なSSL光源が主流になっており、より光の扱い方に関しては難化しております。

遅かれ早かれ、基礎の基礎となる光を学ぶことは必要だと感じてました。動画でも静止画でも、光を上手に使いこなすには、光を分解して読み解き、光学的に理解することが重要です。
これ知ってたところで写真が上手くなるかはわかりませんけど、まぁ普通の人より変わった人にはなれるんじゃないんですかね……。

で、昨今某精密機器メーカーなどから撮影向けの分光測色計(カラーメーター)が発売されています。
私はこういうカラーメーターってのはプロとかよりも、最近写真を始めた人とか、趣味でいろいろ撮ってますとかそういう人にこそ必要だと思うんですよ。
プロはライトもカメラもちゃんとしたもの使ってれば問題は起きないんです。プロじゃないんで知らんけど。
私みたいな貧乏カメラおじさんとかは、なるべくお金をかけずにクリップオンストロボとか、市販の照明を代用して撮影することが多いと思います。その時にそれがどのような性能であるか把握してないと、いつまで経っても思ったようにいかないループに陥ります。
アマチュアこそこういう測定器でどんどんいろんな光を見てみてほしいです。同じ白色光でもいろんな光源をスペクトルで見てみるとそれだけで新たな発見です。
こういう測定器が手頃な値段で手に入って、このLEDは良かったとか、こうすると綺麗に撮れるとか、あの製品は撮影用とか言っておいて中身は……だったとかそういう話が盛り上がれば良いなと。

それにしても、世の中の分光測色計は高すぎて買えなぁぁぁい!!(渡辺謙風に)
ならば作るしか無いということになりますよね。

方法

無いのなら
  出るまで待とう
      ホトニクス

果報は寝て待てです。分光測色計の作成にピッタリなセンサが秋月電子から発売されました。
浜松ホトニクス製 マイクロ分光器 C12880MA(クリックで秋月電子へ)です。
秋月電子 C12880MA
これは本当に素晴らしいセンサです。これが無くては始まりませんでした。
扱い方はシンプルで、カメラのようにシャッターの開ける時間を調整することで蓄積時間を調整することができ、あらゆる光量に対応できます。分解能は10nmくらいですが、中心波長のステップは2~5nmくらいで精度が高いです。電源電圧は3.3Vで特に部品を追加しなくてもArduinoと連携することが出来ます。

この素晴らしいセンサC12880MAとArduino MEGA 2560を組み合わせていろいろ頑張ると、上記動画の分光測色計が完成しました!


作ってみた感想としては、自分としてはかなりいい感じになったと思います。
処理の方法とか結構苦労しましたが、その割には思ったより素直に動いてくれた印象があります。
電子回路としてはとてもシンプルで、センサやスイッチの入出力だけ。後はArduinoでどういう計算をさせるかというような、スケッチの作成が殆でした。

機能紹介

メインメニュー
メインメニューはこんな感じになっていて、タッチパネルで操作できます。主要機能は上段4項目で、下はおまけですね。Lux計はストロボなどのトリガーをするためにつけた別センサで、精度はありません。テキスト表示は主要な値をざっと表示します。Configは設定画面、現在押しても何も起きません。SerialはPCと接続して分光分布のデータを送信します。
太陽光スペクトル
太陽光のスペクトル
基本となるのはこのスペクトルの表示画面です。スペクトルは350~800nmの範囲で表示し、可視光380~780nmはそれに対応する波長の色で、それ以外は灰色のスペクトルで表示します。
市販のカラーメーターでは、スペクトルの端から端まで鮮やかな色が着色されてるものが多く見受けられますが、そんなにカラフルな色が可視光の端から端まで見えて、そこから1nm可視域からずれたらいきなり見えなくなるわけではありません。誤解を招きますので、スペクトル表示は標準視感度に応じた色で着色してあります。

画面レイアウトを考える時にちょうど、PSYCHO-PASS SSシリーズやっててその時の影響を受けたデザインになってます。あ、これ色相だ!って。
なので白色は「White」ではなくて、「Clear Color」と表示されます。

黄緑光スペクトル
よぉ黄緑野郎。今日も優雅に個室でランチか。


CIE1931 XYZ色度図
CIE 1931 XYZ色度図表示
CIE 1976 UCS色度図
CIE 1976 UCS色度図表示
動画の通り、色度座標はCIE1931xy色度図とCIE1976UCS色度図(u'v'色度図)の表示が出来ます。
xy色度図はカラーキャリブレーションとかモニターの色域とかの広告とかでお馴染みですね。u'v'色度図はざっくりいうと色の違いができるだけ均等になるようになっています。
色度図表示はあまり使わない機能なんで入れるか悩んだんですが、入れたほうが途端にそれっぽく見えてプロっぽいので、やっぱり入れることにしたのですけど、これをArduinoでやろうとするとちょっとややこしくなります。

というのもArduinoでビットマップのような大きなデータを扱うことは出来ないため、別にメモリを用意して表示する必要があります。そのため、microSDカードのスロットをつけて、そこに色度図のようなビットマップデータを入れることにしました。
Arduino MEGA シールド
今回作成したシールドには、microSDカードスロットがついてます。
色度図表示にちょっと時間がかかるんですよね。なので、画像を表示したら座標の点を打つだけにして、50回くらい点打って図が汚れたら書き直すみたいな処理になってます。
組込み用の色度図は「色度図作成ソフト ColorAC」を利用させていただきました。この場を借りて感謝申し上げます。

右下には正常にセンサが動作しているかひと目で分かる、ミニスペクトルを表示しています。おそらく業界初でしょう(当社調べ)。


演色評価数
演色評価数表示画面
演色評価の計算は悩みました。相当な数の浮動小数点の計算が必要で、普通に作るとRAMメモリはあっという間に使い切ってやむ……。やり方はいろいろあると思いますが、いろいろやってJIS Z 8726と同じ方法の計算を行ってますので、センサが得たスペクトルが正しければ、正しい計算になってるはずです。

⊿uvは基準光と試験光の偏差……、身近な例を挙げると色被りですね。偏差が負の方向になると、緑の色被り、正の方向になればマゼンタの色被りです。数字が大きく振れると数字の色が変わるようになってます。⊿uvが0.02以内であれば白色光と見做すことができます。
某社のカラーメータみたいに、カメラの色温度設定画面に落とし込めれば面白かったんでしょうけど、今後の課題です。

おわり

機能としてはこんな感じですね。分光センサの扱い方とか、部品の構成、回路の説明や校正の方法などなどいろいろ話したいことはいろいろありますが、評判良ければまた続きを書いていきたいなとは思っております。
まだ計算してないんでわかりませんが、部品の半分以上は分光センサの値段で構成されております。センサの値段だけちょっとネックなんですよねぇ。それでも制作費は破格の値段です。

ようやく一段落ついたんで、ドール見てこよ……。




参考文献・引用文献
太田登(2001)『色彩工学 第二版』東京電機大学出版局.
篠田博之 藤枝一郎(2007)『色彩工学入門』森北出版株式会社
田所利康 石川謙(2014)『イラストレイテッド 光の科学』株式会社朝倉書店
Massimo Banzi,Michael Shiloh(2015)『Arduinoをはじめよう第3版』株式会社オライリー・ジャパン

JIS Z 8725:2015 光源の分布温度及び色温度・相関色温度の測定方法
JIS Z 8726:1990 光源の演色性評価方法

「■CIE XYZ表色系(9):XYZ-RGB の変換式 と カラートライアングル」
<http://www.enjoy.ne.jp/~k-ichikawa/CIEXYZ_RGB.html> 

「Arduino Adafruit GFX Library User Guide」
<http://henrysbench.capnfatz.com/henrys-bench/arduino-adafruit-gfx-library-user-guide/>

株式会社東芝「光源色と演色性」
<https://www.tlt.co.jp/tlt/lighting_design/design/basic/data/10_22.pdf>

浜松ホトニクス株式会社 ミニ分光器マイクロシリーズC12880MA
<https://www.hamamatsu.com/resources/pdf/ssd/c12880ma_kacc1226j.pdf>

コメント

  1. 是非、続きが読みたいです。

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    1. お返事遅くなってすいませんでした。
      コメントありがとうございます。励みになります。
      記事を書くスピードはあまり早くありませんが、続きを書いていくつもりでいるので、また見てくださると嬉しいです。

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