オシロスコープ Tektronix 2432A 修理

背景

往年の超高級オシロスコープ Tektronix 2432A
昨年オシロスコープ使ってたときに、シュージジジッという音ともに異臭が発生したため、慌てて停止。再度起動させたときに自己診断画面で一部FAIL表示となったため、もうだめだ壊れた終わった…。と、一年ほったらかしていたオシロスコープをどげんかせんといかん。

新しいオシロスコープを買うという選択肢もある。だが、いくらデジタル化が進んだとはいえ、測定器は高級品だ。一方、中国製の安いオシロスコープも登場している。DIYではそれで十分かもしれない。だが、そこはちゃんとメーカー品じゃないとという無駄なこだわりがあり買う気になれない。たいていこういう測定機器は一度買うと壊れるまで使う事が多い、せっかく買うのならちゃんとしたのが欲しい。
というより、貧乏研究室はそんな機器更新の余裕なんて無い。そうすると残された道は1つ。
いまあるものを修理しなくてはいけない。直ったらいいなじゃない、直すしか道はないかと。
でも、もし買えるなら KeysightのInfiniiVision1000Xシリーズのオシロがほしいです!!!!



方法

今どき20年前のオシロスコープをメーカーに持ち込んでも笑われるだけなので、自分で修理だ。この時代のオシロスコープには前述の通り、自己診断による故障箇所のある程度の断定が可能である。これは、300ページにものぼるサービスマニュアルを片手にアドレスを参照する必要があるので、インターネットから同機種のマニュアルを探す。そうすると、Tektronixのサービスマニュアルの充実っぷりにびっくりする。どうぞいじってくださいと言わんばかりに。

診断機能(EXTENDET DIAGNOSTICS)の結果はこんなかんじ。


CCDに関する部分が悪いですねみたいな。
左の4桁の番号は、チェックする項目のアドレスになっていて、階層が深くなるごとに該当する桁が変わっていきます。

下の写真は、CCDのチェック項目を1つ下の階層にアクセスしたときの画面です。さらに階層が分岐していて、ここで全部載せると大変なので省略します。
今どきのCPUと違ってたくさんのICが協調とって動いていますから、多くのチェック要素があるんでしょうね。

壊れたら基盤交換ってのが現代ですが、昔は壊れたら部品交換だったのかもしれません。

結論からいいますと、なるほどわからん。ですな(達観)。

この7000番のアドレスっていうのは、試験信号を出して、アナログ回路のいろいろな出力が校正の範囲に収まっているかチェックするみたいなかんじらしいです。そのチェックのためには、回路図でしめすどこそこをオシロスコープで波形を確認しなさいみたいに出てきて、だからオシロスコープ修理してんやろ!!??

でも、壊れた時シュージジジッ…ってなったんだから、どうせなんかコンデンサとかそういう素子が焼けただけみたいな感じしませんか?こうして一応プログラムは動作していますし、そこまで深刻じゃない気がするんです。あけてみて、焼けたところの部品をとりあえず替えてみましょうということに。

とりあえず開けてみます

こいつはすげぇや!!
今じゃ考えられないICの数に惚れ惚れしますね。まだこの上面の基盤だけで、クロックやタイミング、ディスプレイ表示関係の基盤ですよ。下部にメインCPU等を積んだメインボードと、裏面に計算や処理を行う基盤とか、更に内部に電源基盤とか重なってます。

基盤はヒンジで固定されていて、クルリンパしても落下したりしない。
それどころかコネクタ繋いだままこの状態で検証ができるようになっていて、
当時のメンテナンスのひたむきな設計思想が感じられます。

いろいろな角度からくまなく見てみますが、どこも焼けた跡がありません。
残るは最深部、電源基盤のみとなりました。まぁ電源が一番怪しいですよね。
最深部電源基板。トランス類はアルミ板?でシールドされています。
それにしてもCRTでかいなー!!

結果

我々スタッフが一生懸命捜しました。破裂コンデンサさん、見つかりましたよ。
コネクタ等外して基盤を外に出します。

探せば出てくるもんですねー(適当)
この写真では分かりづらいですが、右手の黄色いフィルムコンデンサが破裂してました。おそらくその時の短絡で、直列に入っていた68Ωの抵抗が焼損したのでしょう。

ディファレンシャルモードのノイズフィルタでしょうか。
抵抗が焼ききれたお陰で、波及はしませんでした。
写真左下に同じようなコンデンサがあるので、両方交換しちゃいましょう。
それにしても、これが原因でCCDあたりの自己診断でエラーが出るのか…?電源にノイズが乗ったことで、直流電源にノイズが入り、ピーク電圧検知の際に異常と判断したのでしょうか。とにかく駄目なところがあれば直していくしかありません。


で、直しました。フィルムコンデンサは共立エレショップで買ったパナソニックのフィルムコンデンサに交換しました。サイズがすごい小さくなって心配ですが、スペックは同等です。時代の差でしょうか。

緊張の電源投入

元に戻したらさっそく電源を入れてみます!!

やったか!?
なぜかいい感じです!

自作の安定化電源の直流波形を見てみました。
こんなんじゃ電圧源としては使えない。作りなおさなくちゃ…。

んー…、pao信号復調……ならず!!!!
電池から直流電源入れた時、表示値がちょっとズレていたので校正が必要みたいです。手持ちの電源装置をオシロにつなげてみたらリプルがひどかったのでやめました。ちゃんとした電圧源を用意すればいいのでしょうが、波形はちゃんと表示できてますので様子見です。

ステレオ音声をCH1,2に入力して、XY表示にするとはちゅねのネギ振りが現れるpao信号。メモリ長が短いので、全部表示しきれませんでした。残念!!

おわり

2432Aのスペックは周波数帯域300MHzまで通りますが、サンプリング間隔は250Ms/s。
メモリ長は多分2チャンネル合わせてだと思いますが、1024Ptsしかありません。しか、と言っていいでしょう。いまエントリークラスのオシロスコープのスペックを見るとびっくりしますよね。見ないようにし(っ `-´ c)マッ‼…でももらえるならKeysightのInfiniiVision1000Xシリーズのオシロがほしいです!!!!


とりあえずこれで懸案事項が1つ解消しました!修理費用部品代のみで101円ですよ!!
性能はともかく、緑色のCRT表示ってなんだかかっこいいですよね。消費電力すごいし、かといって熱に弱いし、机に置いたらそれだけで机が塞がるし、いいことなんて…あんま…ないですけど、未だに20年前の機械が動いているっていうのがいいですよね。
これでしばらく頑張ってもらいましょう。

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