超音波センサを使ったリーク検知

背景

高圧の気体が、ピンホールのような狭い空間から外に漏れ出すとき、人の耳には聞けない領域で笛のように超音波が鳴ります。
この原理を利用して、高圧ガス、蒸気配管等のガス漏れやバルブ、トラップ不良を探知するのが、超音波リークディテクタの役割です。

ただ、この測定器を使った時の効果がわかりにくい。漏れは目視や聴音であるていど判断できる、蒸気だったら温度を測っても良い、冷媒ガスならもっと確度のある冷媒用のリークディテクタがある。別になくても困らないけど、あったら面白そうな微妙な立ち位置の測定器です。
そういう高額な測定器にお金をかける余裕は当然ありません。やはりここは作るしかないかと。

ひとまず、いろんなところで超音波を聞いてみようということで作ったのが超音波検知器(実験器)です。

方法

こんな産業向け測定器を自作してみたなんて話も聞かないので、情報がありません。高い周波数を可聴域の音にする方法として有名なのは、ヘテロダイン方式ですが、即席で作るにはちょっと研究が必要そうです。センサは秋月でよく売ってる、超音波測距センサが使えるはずです。
参考になったのが、コウモリの鳴き声を聞こうとするコウモリ好きさんたちの情報です。バットディテクターと呼ばれており、これも超音波を可聴領域の音にするものです。
以下の参考サイトを見てみると、超音波を可聴域に変換する方法としてバイナリカウンタを使って1/8分周する方法です。
なるほど、別に超音波で音楽や会話をしているわけじゃないんですから、検知しているかどうか音でわかればそれでいいのであれば、こういう方法でありなんですね。超音波40Khzを入力すれば、5000Hzの方形波が出力されるはずです。

自作バットディテクターのサイトを参考させていただき、秋月で揃う部品でいい感じに設計し直して、ブレッドボードで試験したら、持ち運べるようにケースにいい感じに収めます。
オペアンプ二段で増幅して、バイナリカウンタで分周してイヤホンに出力するという明快な回路です。
ついでに5LEDバーでレベルメーターもつけました。バイナリカウンタの性質上、クロックとして動作する閾値がありますから、音が鳴り始める下限があります。
レベルメーターをバイナリカウンタの手前につけとけば、その下限値以下からメーターが振れだしますので、よりディテクタらしく動作します。

突貫作業でケースの作りがしょぼいですが、機能は充分です。
テスト用の超音波の出力方法ですが、セットで付いてきた超音波センサの送信側をファンクションジェネレーターにつないで40Khzを出力させるのが一番てっとり早いと思います。
発振回路を作るという手もありますが、ここは突貫なのでわかりやすく確実な方法にします。貧乏ですからファンクションジェネレーターなんて当然持ってないので、秋月でいい感じのDDSモジュールを用意しました。けっこうしっかりしていていい感じです。

秋月で売ってる5MhzDDSモジュール UDB1005S
こんどケースに収めたい

40Khzを出力すると、40Khzの信号を受信します。当然ですがいい感じです。実際使用する際はもっと弱い信号を受信しますので、ゲイン調整が必要です。

超音波センサの帯域幅が狭いので、素直に40Khzだけを受信します。
距離に応じて位相がとても変化するので、測距センサも作りやすそうです。
上段CH1はDDSモジュール出力
下段CH2はセンサで受信した信号を一段目のOPアンプで増幅したもの


バイナリカウンタで分周します。いい感じの方形波出力になります。
なんか下の方でプルプルしてるの何なんでしょうねぇ…、ブレッドボード上ではなんともなかったんですが。
上段CH1は一段目OP増幅の出力
下段CH2はバイナリカウンタ1/8分周の出力です

結果

バイナリカウンタの出力をそのままイヤホンに繋ぐとパワー不足に陥いったりおちこんだりしますが、ここでは超音波を聞ければまずOKですので、そこは目をつぶりましょう。
参考サイトではインピーダンスのとても高いクリスタルイヤホンを使用していますが、普通のイヤホンでも問題ありません。音は小さいですけど。

ガスガンに使うフロンガス缶をガス漏れに見立ててちょっと吹いてみます。ほんのちょっとでいいんです。思ったより僅かな漏れから反応します、一瞬で5LEDバーがMAXです。

耳で聞いてほぼ無音の状態でも検知するので、期待以上です。
音は「ギュイギュイーン」みたいな音がします。

室内ですと蛍光灯やPC機器のノイズの影響を受けますが、ちゃんと測定対象に近づければ問題なく信号の分別が出来ます。トラップの蒸気漏れ、バルブのリークに反応しますので、目視では判断できない漏れの断定に有効であることがわかりました。
配管のリーク探査においては、場所の検討がついてないときはこれを配管伝いに向ければ素早い探査が出来ます。継ぎ手ごとにギュッポ吹きかけるよりはるかに早いです。

他には、もともとの使いみちとして、コウモリのエコーロケーションの音も聞いてみたいですね。ベランダから外を眺めてみたのですが、こういうときに限ってコウモリが飛んでいません。飛び回る時期があるのかな。
余談ですけど、実家にいたとき家の前が畑だったんで夕方になるとすごいよく飛び回っていたんですよ。余談でした。

おわり

部品代は3000円くらいで済みました。これで超音波リークディテクタの基本的な構成が出来るのですから、大成功ではないでしょうか。
実用に向けて改善すべきは、イヤホン用アンプ、発振対策、ケースのデザイン、超音波センサをプローブタイプに…とか思いつくこといろいろありますが、そこまでするときが来るかどうか…。

参考文献
Tony Messina , Build a Simple Bat Detector
コウモリの声を聞いてみよう! ~新しいかたちのフィールドワーク~

コメント

  1. なにか私がやろとしていたものです。回路図を公開してもらえないですか。

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